サックス記事 神崎ひさあき Come to me! │ 第1回
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This issue’s Guest:神崎ひさあきBAND

神崎ひさあき Come to me! │ 第1回

ARTIST

日本のフュージョン~スムース・ジャズ・サックスの先駆者として1980年代からシーンを牽引し、デビュー40周年を迎えた現在も国際的に活躍を続ける神崎ひさあき。その神崎をホスト役に、毎回ゲストを迎えてトーク・セッションを繰り広げる対談連載『神崎ひさあきCome to me!』が、102号よりスタート!
記念すべき第1回目のゲストは、「神崎ひさあきBAND」のメンバーとして長きにわたり共にその音の世界を紡ぎ続けてきた中道勝彦(key)、石川俊介(b)、岸田容男(dr)の3氏が登場。このバンドについて、またリーダー・神崎ひさあきについて、大いに語っていただいた。

大切なのは、メロディを歌い、聴かせること

楽曲はどのように作られているのですか?
神崎
メロディは、いつも急に思い浮かびます。僕の音楽はいつも“歌(メロディ)”から始まり、そこからハーモニーをつけ、細かいところまで構築していく。《So Far Away》は、寝ているとき夢の中で鳴ってきて、「書きなさい」っていう声も聞こえてきて……(笑)すぐに起きてメロディを書き留めましたね。
神崎さんの曲を聴くと、とても複雑なものが緻密に張り巡らされたボトムの上に成り立っている建築物のような印象を受ける一方、メロディがナチュラルに胸に迫ってきて、とてもシンプルにも聴こえます。それぞれの楽器とのバランスにも絶妙な心地良さが感じられるのですが、皆さんは、サックスと共演する際、何か意識されていることはありますか?
岸田
僕は、サックスだからと言って何をどうしようとこだわって決めているわけではなくて、たとえばサックスがメロディを吹いているときはヴォーカルとも同じような感覚で、自分の楽器をメロディにどういうふうに絡めていくかとか、聴きながら反応していく感じですね。
石川
僕の場合、ベースって弦楽器なので、その特性上、やはりセッションする相手によってもかなりアプローチを考えますね。たとえばギターのときは、一口にギターと言ってもいろんなギターがあって、ディストーションをマーシャル3段積みにしてるギタリストとストラトでカッティングしかしない人とでは、ベースもアプローチの仕方が全然違う。サックスって、肉声に近いですよね。だからサウンド的には“歌”っていうふうに捉えています。でも、歌よりももっと複雑なこともできるし、大きい音も出るしね、だから、その中間みたいな感じかな。
最後に、本誌の読者にはアマチュアのサックス奏者が多いのですが、そういった方々へのメッセージをお願いします。
石川
僕が楽器を始めた頃は、まだサックス人口も少なくて、たとえばサックスの人を誘ってフュージョンみたいなことをやろうと思ってもなかなかいなかった。でも最近はずいぶん増えて、昔より裾野も広がっているのでしょうね。サックスって、すごく表現豊かでファンキーで、僕も好きな楽器なので、いろんなサックスの人たちと一緒に演奏したいですね。だから、もし良かったら誘ってください(笑)
神崎
サックスって「悪魔の角笛」って呼ばれてるの知ってる? そもそも、この楽器を考案したアドルフ・サックスがすごい人で、これだけの楽器を発明したのに、いろいろなところから訴訟を仕掛けられて破産を繰り返したり、ひどい目にあわされたりして、もう何もかも破滅させたいっていう精神状態になって、巨大な大砲の設計図まで残してるんだよ。そういった魂が込められていて、クレイジーなの、この楽器は。僕はこれを吹いているうちにそうなったのかもしれないなぁ(笑)
岸田
そんなシリアスな歴史が……。僕もいろんなサックスの人と演奏する機会がありますが、サックスって、煌びやかで、倍音も豊かで、でもノイジーな成分もあって、アルトでもテナーでも、それぞれが持っている音色自体が魅力的。そういう中で、やはりすごいプレイヤーの演奏というのは、たとえ小さな音であっても、すごいエネルギーが出ているなぁと思います。是非、自分の音というものを大事にしながら、内に向かうよりも外に向かうパワーを持って音楽をやっていってほしいです。
中道
僕は、カーク・ウェイラムが神崎さんのことを称した「ソウルを表現するツールとして、サクソフォンはマイクロフォンに優る、と私は考える」という言葉がすごく好きなので、皆さんにもお伝えしたいと思います。サックスを存分に練習して、大いに気を狂わせてください!素晴らしい楽器だと思います!
神崎
とにかく健康で、ストレートに、明るく、サックスに向き合い続けてください。そして、世の中にはいろいろなやり方があって、いろいろな教えがあるけれど、人に言われることを受け止めているだけでは暗記と手数だけで終わってしまうこともあるので、皆さんには是非自分自身で発見する態度で臨んでほしいと思います。―みんな、今日はどうもありがとう。
登場するアーティスト
画像

神崎ひさあき
Hisaaki Kanzaki

高知県出身。青山学院大学卒業後、日本のジャズ・フュージョンブームのスタートとなる「神崎on the road」を結成。1980年、『OPEN MY MIND』でデビュー、その後3枚のアルバムをリリース後渡米。1988年ラス・フリーマン、リッピングトンズ等を迎えアルバム『KANZAKI』をリリース。帰国後は数々のテレビ、CMの音楽制作、プロデュースなどの活動を積極的に行なう。作曲の『SO FAR AWAY』をマイケル・ホワイトがカバー、アルバムタイトル曲としてリリースし、全米ジャズチャート9位にランクインされコンポーザーとしても評価される。マイケル・パウロとのプロジェクト『エイジアン・ソウル・ブラザーズ』での活躍など、国際的な幅広い活動を展開。DJ、クラブイベントのプロデュースなども行なうなど、クラブミュージックシーンでの活動も展開中。http://www.kzsax.net/

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