サックス記事 須川展也 ヤマハサクソフォンを高みへと導いた世界的スタープレイヤー
  サックス記事 須川展也 ヤマハサクソフォンを高みへと導いた世界的スタープレイヤー
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誕生から20年を迎えた至高の銘器に魅了されたヴィルトゥオーソたち

須川展也 ヤマハサクソフォンを高みへと導いた世界的スタープレイヤー

ARTIST

今やアルトサクソフォンの最高峰として、誰もがいつかは手にしたいと憧れる銘器となったヤマハのカスタムモデルYAS-875EX。
その誕生から今年は20年の節目となる。そこで今回はYAS-875EXが国内外でジャンルを問わずトップ・プレイヤーに愛されるに至った理由を探っていく。まずは本邦サクソフォン界のシンボルとも呼べる世界的プレイヤー須川展也氏に話を訊こう。長年、須川氏とタッグを組み開発に携わってきたヤマハ株式会社B&O事業部 B&O開発部 管教育楽器開発グループ主幹の内海靖久さんにも同席してもらった。
(文:中野 明/写真:土居政則/協力:ヤマハ株式会社、株式会社ヤマハミュージックジャパン)

須川展也氏(左)とヤマハ株式会社B&O事業部 B&O開発部 管教育楽器開発グループ主幹の内海靖久さん

先入観なしで判断することの重要性に気づいたブラインド試奏会

初めてのご自分の楽器は高校入学時に手に入れたヤマハYAS-61とのことですが、そのサクソフォンについての思い出を聞かせてください。
須川展也
高校受験の時に父から浜松北高校に合格できたら楽器を買ってあげると言われていて、入学した後ある日突然、父が買って帰って来たんです。多分デパートの楽器売場とかで「ヤマハの一番良いサックスを」と言って買ったのかな(笑)。それがYAS-61でした。もちろん嬉しくて、宝物ですよね。自転車の後ろの荷台にくくり付けてどこにでも持って行きましたね。今から考えると酷い取り扱い方ですけど(笑)。高校2年で東京藝術大学を受ける決心をして、レッスンを受け始めた大室勇一先生のすすめでセルマーに替えるまで使いました。
1988年に発売されたカスタムYAS-875/855の開発には、当時ヤマハで設計を担当されていた平舘さんを通じて初期から携わられていたそうですね。
須川
藝大3年で日本音楽コンクールで最高位になった後、平舘さんに声をかけていただいて動き始めていたカスタムの開発をお手伝いすることになりました。まだセルマーを吹いていた頃ですが、僕はヤマハ所縁の浜松市の出身ですし、実は平舘さんには高校生の頃からお世話になっていたので、喜んでと。
印象的だったのは、カスタム発売の直前の頃に、浜松市内のホールを借りてブラインド試奏会をしたことです。ジャン=イヴ・フルモーさんと僕の二人が代わる代わるに他社の楽器も含めステージ上で何本も吹いて、客席の一番後ろでヤマハのスタッフの方々と聴いて(楽器は見ずに)音だけで評価するという。僕がジャン=イヴの音を聴いて「これが一番良い音だなあ、セルマーに違いない(笑)」と二重丸を付けた楽器が、実は875だったんです。先入観なしで聞いたら、ヤマハが一番良かった。逆にジャン=イヴも僕の吹いたヤマハに二重丸を付けていました。
先入観なしで判断するというのはとても大切です。いまも試奏する際には自分ではなくこの楽器を将来きっと吹くであろう大勢の人たちのために、できるかぎり公平で客観的に判断したいと常に思っています。

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・どの方向にも行ける柔軟性を持っているアンテナを立てられる楽器
・最終的にはジャンルを問わずあらゆる人のインスピレーションを刺激したい

 
登場するアーティスト
画像

須川展也
Nobuya Sugawa

日本が世界に誇るサクソフォン奏者。そのハイレベルな演奏と、自身が開拓してきた唯一無二のレパートリーが国際的に熱狂的な支持を集めている。デビュー以来、長年にわたり同時代の名だたる作曲家への作品委嘱を続けており、その多くが国際的に広まっている。近年では坂本龍一『Fantasia』、チック・コリア『Florida to Tokyo』、ファジル・サイ『組曲』『サクソフォン協奏曲』等。東京藝術大学卒業。第51回日本音楽コンクール、第1回日本管打楽器コンクール最高位受賞。出光音楽賞、村松賞を受賞。98年JTのTVCM、02年NHK連続テレビ小説「さくら」のテーマ演奏をはじめ、TV、ラジオへの出演も多い。89年から2010年まで東京佼成ウインドオーケストラのコンサートマスターを務めた。最新CDは16年発売の「マスターピーシーズ」(チック・コリア/ファジル・サイ/吉松隆)。トルヴェール・クヮルテットのメンバー、ヤマハ吹奏楽団常任指揮者、イイヅカ☆ブラスフェスティバル・ミュージックディレクター、静岡市清水文化会館音楽アドバイザー&マリナート・ウインズ音楽監督。東京藝術大学招聘教授、京都市立芸術大学客員教授。

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