藤野美由紀 「キャンディー・ダルファー・マスター・ブック」発刊10周年記念スペシャルインタビュー

日本のファンク＆ソウルミュージック・シーンで、まだ女性奏者が少ない時代から独自の道を切り拓いてきたサックス奏者、藤野美由紀。そんな彼女が敬愛するキャンディ・ダルファーを題材に自ら手がけた教則本「キャンディ・ダルファー・マスター・ブック」の発刊から10年が経った。ここで再び彼女に登場いただき、ルーツや最近の活動について話を伺った。

 

修行時代からプロになるまで

――

藤野さんに監修いただいた「キャンディ・ダルファー・マスター・ブック」（2008年）の発刊から、ちょうど10年が経ちました。いまなお人気のある教則本ですが、10周年の心境をお聞かせください。

藤野

キャンディに出会ってから、いつかキャンディに関する本を出したいというのが20代の頃の夢でした。そして30代で叶えた夢の形が、こうして10年間も販売されるロングセラーになるというのは、本当に嬉しく感謝の気持ちでいっぱいです。

――

藤野さんのルーツはファンクやソウルミュージックにありますが、その中でも特にキャンディ・ダルファーとの出会いは運命的だったと言えますね。

藤野

社会人バンドで修行していた20代の頃、ジェームス・ブラウンやメイシオ・パーカーなど聴きまくりました。あるときそのバンドのメンバーが、「すごい人が出てきたぞ」って。渡されたCDを見たら、めちゃくちゃ綺麗なスーパーモデルみたいな人がサックスを持ってる。CDを聴いてみたら、私がやりたいと思っていた、“サックスで歌う”ってことを普通にやっていたんです。それがキャンディ・ダルファーでした。当時、日本の車のCMにキャンディが出演していたこともあったんですよ。アルバム「サックス・ア・ゴー・ゴー」にかけて「シビック・ア・ゴー・ゴー」って（笑）。そのくらい日本でも話題になっていたんですよね。

――

80年代の日本のファンク＆ソウルミュージック・シーンやサックスシーンはどのような状況でしたか？

藤野

海外のソウルミュージックは、60～70年代の時点でリアルタイムに日本に入ってきていたので、当時の日本のアレンジャーさんたちは、アメリカのソウルミュージックを好きな人が多かったように思います。ピンク・レディや山本リンダさんなどのアレンジにもそれを感じますね。そういった土台はあった上で80年代は、後期のチェッカーズや、後に続く東京スカパラダイスオーケストラ、米米クラブのビッグホーンズビーも、ソウルミュージックの影響を受けていたと感じずにはいられません。私はこのあたりにもすごく影響を受けています。

次のページにつづく

---

LIVE Information

---

藤野美由紀プロデュース本
（アルソ出版刊）