このコーナーではオーボエとファゴットに関して2号連続で取り上げてきましたが、「ダブルリードに関してもっと知りたい!」という声をたくさんいただきました。そこで! ダブルリード楽器のリードの世界をさらに深く掘り下げます。世界随一のダブルリード専門店、日本ダブルリード株式会社のリペアマン、萩森弥郁夫(はぎもりみかお)さんにお話を伺いました。
オーボエのリードはファゴットのリードと比べて幅がほぼ半分の大きさです。それゆえ、オーボエはファゴットに比べてより細かい変化に神経質にならざるを得ません。ファゴットのリードは天候などの変化に対応しやすいですが、ファゴットはデリケートな楽器なのでリードと楽器の相性に気を配らなければなりません。また、リード作りはベースとなるチューブがなく、一体で製作しなければならないファゴットのほうが難しいです。そのため、ファゴットに関してはリード作りと演奏の分業化が進んでいます。オーボエはまだまだ自分で作らないと満足できないというプロ奏者の方が圧倒的に多いですね。
昔はファゴットのリードにもオーボエと同様にチューブにケーンを巻き付けて作っていました。しかし、ファゴット人口が増えてリードを市販しようとなった時にボーカルの大きさがメーカーによってまちまちなのが問題となりました。サイズの合わない完成リードが続出してしまったのです。また、当時はチューブも一本一本手作りだったので、リードがとても高価になってしまいました。そこでチューブの代わりにワイヤーで代用したのです。これで穴の大きさが調節できるので、ボーカルに直接突き刺すことができるようになりました。しかしそれだけではリードが軽すぎて音が散ってしまいます。そこで根元の部分を糸の玉にし、ラッカーをたっぷりつけることで適度な重さを得て現在の形となったそうです。今でも糸の玉の大きさによって響きの量を調整してあります。
オーボエやファゴットのリードは、市場にオープンに流通しているものだけで60種類ほどありますが、個人で製作しているようなものも含めればファゴットで150種類、オーボエでは300種類ほど存在します。 売れ筋というものはあまりありません。当店で取り扱っているリードについて話しますと、どのリードもまんべんなく売れます。楽器との相性や習熟度などで求められるリードの傾向が異なるからです。