梅雨まっただ中の今日この頃、特集はかたつむり……によく似た楽器、ホルンです!ホルンの輝かしい音色は金管奏者の憧れの的ですが、管が長いためにコントロール、スタミナともに難しい楽器でもあります。「4月からホルンを吹いてるけれど、なかなかうまくならない……」「コンクールに向けてもっとうまくなりたい!」などなど、悩めるホルン奏者の皆さんは必見! ホルンが気になってしかたない他の楽器の人もぜひ読んでみましょう! 楽器のことも、練習法も、うまくなるコツも、この特集を読めばバッチリです!
ギネスブックで一番難しい金管楽器に登録されているという、奏者にとってはまったくありがたくない勲章を持つホルン。管が長く、構造も複雑……。でもやっぱり、ハイトーンから低音まで、そして吠えたかと思えば弱奏までこなすホルンはかっこいいですよね! まずはホルンという楽器をよく知るところから始めましょう! ネロ楽器の作道正徳さんにお話を伺いました。
ホルンはもともとロータリーのついていないポストホルンから派生していった楽器です。歴史的にはナチュラルホルンやフランス式のピストンホルン、ウイーンフィルで使われるウインナホルン という楽器もありますが、現在はロータリー式のホルンが一般的に使用されています。
(写真左)ナチュラルホルンはロータリーがありません。右手を使って音を変えていたそうです
(写真右)トリプルホルンはかなり重量がある楽器です。管が三段重なるので、ロータリーもその分長く、重くなり、数も5つ以上に増えます。構えると肩に相当な負担がかかるので、身体を壊してしまう人も中にはいるくらいです。
現在のホルンは、シングルホルンとフルダブルホルンというスタンダードな楽器の他に、トリプルホルンやセミダブルホルンなども使用されます。通常のF管の長さは約3.6m、B♭管は約2.7mです。フルダブルホルンはこの2本の管を組み合わせて作られているのでさらに長い、ということになります。通常の半分の長さのHi-F管やHi-B♭管を組み合わせて、さまざまな種類のホルンが製作されていますが、フルダブルホルンを使用することが多いですね。
また、ワーグナーチューバという楽器もホルン奏者が演奏します。音域はユーフォニアムやチューバに近い音域ですが、マウスパイプが細いのでコンパクトな響きになります。
Hi-F管やHi-B♭管は高い音を外しにくくするために使用します。かといって短い管を使用すれば立ちどころに高音が出るわけではありません。トランペットで高音が出ない人がピッコロトランペットを使用しても高い音が出ないのと同じことです。なので、F管、Bb管、Hi-F管で構成されるトリプルホルンは、高い音から低い音まで確実に当てることを要求されるプロの世界ではよく使用されています。
シュミットというメーカーのトリプルホルンはかなり軽量化されているので人気ですが、アレキサンダーやパックスマンなどの重厚な音色を好む奏者もいらっしゃいます。
重要なのは初心者でも自分に合う楽器を使うことです。当店では初心者のお客さまが来店した時もいくつか楽器を試奏してもらいます。中には初心者でも吹きやすさを判断できる方もいらっしゃいますが、判断できない場合は、まずは細ベルの楽器をおすすめするようにしています。ヤマハのダブルホルンでいえばYHR-567という楽器が細ベルですね。
細ベルを使うか太ベルを使うかで吹奏感だけではなく、奏法まで変わります。指導者によっても意見が分かれるので難しいのですが、初心者には細ベルのほうが楽に音を出すことができるでしょう。
それでも決められない場合は見た目で決めてもらいます(笑)。見た目で決めることも決して悪いことではないと思います。練習するモチベーションにもつながりますしね。
ホルンには太ベルの楽器と細ベルの楽器があります。細ベルのほうが使う息の量が少ないので、音を出すのが楽ですし、高音を当てやすいです。逆に太ベルは低音を出しやすく、息をたくさん入れても音が割れにくいです。ベルを外して比べてみると、太ベルの方が大きく高さがあります。
はい、キンダーホルンという楽器があります。当店に在庫があるのはBbシングルの楽器です。音域は通常のシングルホルンと変わりませんが、管をコンパクトに巻いているので小さく見えます。ベルも小ぶりですね。しかし、比較するとわかりますが、抜差管の長さは通常のホルンと変わりませんし、ロータリーも同じ大きさです。通常のホルンと比べても遜色のない音を出すことができます。分数ヴァイオリンをイメージしていただければいいかもしれません。
通常のホルンを子どもが持つと、ベルの位置が後ろになりすぎてしまい、右手に力をかけられず楽器を支えられなくなるそうです。通常のホルンを使う子は楽器を支えるスタンドを使う場合もあるそうですが、キンダーホルンでしたら身体に収まるので無理なく楽器を持つことができます。
通常のフルダブルホルン(右)とキンダーホルン(左)の比較。大きさはかなり違いますが、音域は同じです
まずは一番標準的な、内径が17.5mm付近のマウスピースを吹いてみましょう。そこから好みに合わせて大きいマウスピースや小さいマウスピースを吹き比べましょう。さらに、VカップやUカップなど、カップの種類も吹き比べてみましょう。リム形状の違いもメーカーによってさまざまです。アメリカのメーカーはリム形状が比較的薄め、ヨーロッパのメーカーは比較的厚めという傾向がありますね。
また、マウスピースと楽器の相性もあります。ホルンにはアメリカンシャンクとヨーロッパシャンクという2種類のシャンク(マウスピースと本体の接合部分のこと)があります。アメリカンシャンクのほうが少し太いです。例えばコーンというメーカーはアメリカンシャンク、アレキサンダーというメーカーはヨーロッパシャンクです。マウスピースもそれに合わせて選ぶ必要がありますが、もしどうしてもシャンクが合わないマウスピースを使いたい場合は、別料金がかかりますがマウスピースを削り、シャンクを合わせることができます。
上達するにつれて、また先生からアドバイスを受けて、マウスピースのサイズが変化することももちろんあります。しかし、あまりマウスピースに悩み過ぎると調子を崩してしまうこともあるので注意しましょう。
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