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みんなのキニナルを解決!? プロに聞く!Q&A

特集シリーズ \ 第2弾 /

Contents

ソプラノ・サックス
アルト・サックス
テナー・サックス
バリトン・サックス

◆バリトン・サックス:栃尾克樹 Katsuki Tochio

栃尾克樹さん

大阪府出身。1986年、東京藝術大学卒。アルモ・サクソフォン・クヮルテットで、第21回民音コンクール「室内楽」第1位。ソロ、室内楽、国内の主要なオーケストラや吹奏楽、映画、ドラマ、CM 音楽等で演奏。現在までにソロアルバム5枚、アルモS.Q. として7枚、ジャンルを越えたアンサンブル「Colors」で3枚等、多数のCD をリリース。また、高橋悠治、波多野睦美とともに、トリオ「風ぐるま」として活動、2014年にはCD「風ぐるま」をリリース。東京佼成ウインドオーケストラ団員。武蔵野音楽大学及び同附属 高校、聖徳大学非常勤講師。

Q.迫力のある音を出したい!

いつも音が小さいと言われます。バリトンで迫力のある音を出すための練習方法を教えてください。

A.すべての基本は“息”

・お腹で支えてしっかりした息を出すこと
・無駄な力を抜くこと
この二つがとても大切なことです。
小さな音も大きな音も、レガートもヴィブラートも、タンギングのコントロールも、すべての基本は「息」です。そして、良い脱力ができたときに、楽器は効率よく響いてくれます。イメージとしては、イチロー選手や、梨田昌孝さん(※)のバッティングフォームなどをイメージしてください。あくまでもイメージです。決して楽器をバットに見立てて振り回さないように!
( ※梨田昌孝さん…… 往年の近鉄バファローズの名捕手で、監督としては、近鉄、日本ハムをいずれも優勝へ導いた名将として、きっと皆さんもご存じのことでしょう。今シーズンからは東北楽天イーグルス監督に就任され、今後の闘いぶりが楽しみです。現役時代の彼の「こんにゃく打法」は脱力の極みでした。)

Q.音を長く伸ばすのが苦手です

長い音が吹けません……。合奏の練習の前に、全員で8拍ずつのスケールを吹きますが、♩=60で8拍が保ちません。正しい息の使い方を教えてください。

A.フレーズ感を大事にすることを優先して

息が長く続かない人は、息を長く続けることばかり目指すのではなく、フレーズを切らないブレスのとり方を練習したほうが合理的です。
メロディの中でブレスを取るとき短い時間で素速くブレスを取り、その時間で吸える分量の息だけを吸います。あくまでも、吸う息の量を決めるのではなく、ブレスにかける時間を決めるのです。
上手なブレスなら、回数が多くてもメロディは繋がります。
「肺活量」と言う言葉の示す通り、肺容量ではなく肺活量、つまり、「肺を活かす量」なわけです。
いつも、正しい腹式呼吸で、たくさん吸って吐くようにしていれば、それまで一部の能力しか使えていなかった肺をより効率よく活用できるようになり、自然と肺活量はアップするとは思います。

Q.ノイズや雑音が気になる

ソロで ppの場合、キィの開閉の音が気になります。また ppで吹こうとするとジージーと雑音が入り ます。雑音を入れずに小さな音を出せるようにするにはどうしたらよいでしょうか。

A.音の芯と響きが大切

キィの開閉音は、タンポが大きいのである程度は仕方ありませんが、タンポが古く固くなってしまうと、より大きなパタパタ音が出てしまうので、その場合は、修理に出してタンポを交換してもらうと良いでしょう。
曲中の静かな部分では、普段より少し指をのばし気味にしてソフトで敏捷なキィ操作が必要です。ただし、キィの動き自体が遅くなってしまうと、レガートは繋がりませんので、あくまでも敏捷にということを忘れずに。金属音がする場合は、フェルトやコルクなどのはがれ落ちや摩耗、メカニズムの可動部の摩滅によるガタつき、油ぎれなどが考えられます。自分では直せないので、調整に出してください。ppのジージー音は、息をしっかり絞って、針の穴に糸を通すようなイメージで しっかり「ツボ」に集めると低減します。息のスピードが不足すると、リードの裏で結露しやすく、ジュルジュルいってしまうこともあります。
小さな音でも、音の芯と響きがあれば、多少のノイズはそれほど気にならないものです。音楽によって求めてくる音は違います。大事なのは、イメージした音により近い音色を出せるようになることです。

Q.これだけはやっておきたい!

バリトン・サックスでこれだけは気をつけてほしい、この練習はしてほしいものは?

A.A キィまで使った練習を

A キィまで使った練習を

イラスト:中村あつこ

バリトンと言っても特別な練習方法などはなく、アルトと同じように、同じエチュードを使って練習すると良いと思います。ただ、バリトンには通常低いA のキィが付いているので、市販のスケール集を使って練習する場合も、Low-A まで使うように書き換えて練習するのがよいと思います。
あと、バリトン・サックスの陥りやすいことの一つとして、すべての発音がスラップタンギングになってしまう、ということがあります。これも、息の支えがなく、舌と口先だけで発音しようとしたときに起こります。いつも「発音の主役は息」と言うことを念頭に置いてください。「バリトンなんだから、バリバリした音で、多少アタックが乱暴になっても、それが味というもんだ」というのも、実は一理ありますが、そういう音も出せて、ノイズのない発音もできると、より世界が広がりますよね。
バリトンだけでなくテナーの方にも多い事例ですので、お互いに注意し合えば、更なる技術向上につながると思います。

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