◆知っていると、ちょっと得する、キィとポストの豆知識
楽器はとてもデリケートなものです。特にフルートは他の楽器と比べて、小さくて細かなパーツが多く、緻密なメカニズムがたくさんあります。これからも吹き続けていく上で必要なのが、楽器の寿命を延ばすための日頃のメンテナンスです。メンテナンスをする上で重要なのは楽器を知ることです。そこで今回はキィとポストについて解説します。
意外と知らないキィのこと
キィってどんなもの?
トーンホールと呼ばれる音孔(穴)を塞ぐために装備された円形のフタのようなものがキィです。キィカップとも呼ばれていますが、これは音程をとるためのものです。キィの裏側にはタンポが付いています。息がもれないよう、穴をしっかりと塞ぐための器具で、表面は子牛の腸の皮(フィッシュスキンともいう)、中にはフェルトが入っています。
キィの種類
リングキィ
リングキィは、キィの中央部に穴が空いています
キィの中央部分に穴が空いているものをリングキィといいます。左手の中指と薬指、右手の人差し指と中指、そして薬指の計5 ヶ所にリングキィが配置されています。リングキィを押さえるときは中央部の穴をしっかりと塞がないと正しい音が出ません。しかし、奏法によっては、若干穴を開けて吹くこともあります。
カバードキィ
フタになっているカバードキィ
穴の空いていないキィをカバードキィといいます。主に初心者向けの楽器に採用されており、キィを押さえれば、その裏面にあるタンポがしっかりとトーンホールを塞いでくれます。
インラインとオフセット
上がインラインで、下がオフセット。G#レバーをはさんだ左右のキィの角度が違います。
インラインとオフセットはキィの並び方を表す言葉です。オフセットは左手薬指で押さえるキィがずれているタイプで、角度がついているので左手薬指のキィが押さえやすくなっています。一方、インラインは左手薬指のキィもほかと同様の位置にあり、キィが一直線に並んだ状態になっています。オフセットよりもキィは押さえにくいのですが、見た目の美しさが特徴です。また、インラインの場合は、Eメカニズムを付けるのが難しく、付いていないものが多いです。
オフセットはジャーマンスタイル、一方のインラインはフレンチスタイルとも呼ばれています。
キィのお手入れ
手の汗に含まれる皮脂によって楽器の表面は汚れています。キィはもちろん、管体の表面も汚れているのです。また、内部も吹いたときの水分がたまっているので、毎日のお手入れを怠ると、楽器の寿命を縮めてしまいます。
楽器を拭くときにはフルートの構造を理解する必要があります。キィパイプに対し、キィは縦方向に付いています。これを理解せずにキィを横方向(パイプと並行)に拭いてしまうと、キィが曲がってしまうことがあります。キィはキィパイプに対して一つひとつ縦に拭くようにしましょう。
ポストとパイプ
キィを支えるための柱がキィポストで、ポストとポストの間にはキィパイプが組まれています。キィパイプの内部は中空になっていて、その中には芯金が入っているのですが、芯金はキィパイプの中に入っている軸棒(シャフト)と先端にネジの付いたものに分けられます。一方はキィを押さえると芯金が回転して、ノックピンが刺さった連結キィを動かします。ネジが付いている芯金は、キィポストに固定されているので、外側のキィパイプが回転します。キィポストと芯金を固定するためのネジをヤリネジといい、ネジ山は中央部のみに刻まれていて、先端は棒状になっています。芯金には固定されず、刺さっているだけなので、芯金が回転するのです。