楽しくできる基礎練習 ー息の方向を確認しようー
バリトンは楽器が大きいせいか、低い音(オクターブキィを押さないソより下の音)はとても低い音、高い音(オクターブキィを押したソより上の音)はとても高い音というイメージにとらわれがちです。しかしそのために低い音は口がゆるんでぼやけた音色になり、高い音は噛んでしまって音程が高くなります。
しっかりとした音質やフレーズ感、正しい音程を求めるなら息の方向を音域によってその都度「変えない」努力が必要です。しかもマウスピースの息の入る穴が広いので、しっかり息をまとめて音色を作ってください。息をまとめるイメージは口笛を吹くような感じです。
◆ 音階を吹いてみましょう。発音は丁寧に、一つのロングトーンのように ◆
【譜例①】
最初の音と最後の音は同じ響きや音程で終わりましょう。 音は高くなれば大きく聞こえるのが自然です。息の消費量の関係で上のソに到達するあたりで息切れを起こさないように、しっかりとブレス(息)を取って吹きはじめましょう。足りない場合は途中で吸ってもかまいません。とにかく最後までしっかりとした音で吹くことが大切です。頭で音程をイメージしながら(歌いながら)、チューナーで合っているかを確認しながらやると良いでしょう。
最初は音程をぴったり合わせることは難しいので、徐々に慣れさせていきます。それと、この【譜例①】の「レ」と「ミ」はバリトンだけに限らず、サックス全般が高くなる音です。初心者はこの音が高くなりやすいとは思わずに吹いてしまい、それが普通になってしまう場合もあるので、最初から正しい音程を確認するようにしましょう。
◆ 次に低い音、高い音です。 同様に発音は丁寧に、一つのロングトーンのように ◆
【譜例②】
低い音はバリトンの見せ場。しっかりと響かせましょう。特にこの音域は口の中をしっかり広げて共鳴させる必要があります。
自分が出せる最も低い声を出してみて、その口の状態(舌・喉の位置が重要)のまま吹いてみてください。足下から響く低音になると思います。
【譜例③】
高い音はバリトンには不要では?と思いがちですが、音域の狭いサックスは当たり前にこの音域を使います。初心者は「ド」から上の音域では音程がどんどん上がってしまうので、注意してください。
原因は口の締めすぎなので、最初のマウスピースのチェックで確認したポイントを守っていれば、指を動かすだけで必ず高音は鳴ります。音は高くなっていきますが、あくまでまっすぐロングトーンをしているつもりで吹きましょう。ただ歴代の先輩方が正しい音程で吹いていなかった、またはこれまで高音をあまり出していなかった楽器は正しい奏法で吹いても音程がバラバラな場合があるので、チューナーを見ながら音程を矯正するつもりで正しい響きを楽器に教え込みましょう。
全音域をなぞる練習を日頃からしておくと、様々な曲にスムーズに入っていけます。使う教材は他のサックスの人が使っているものと同じで大丈夫なので、できれば全調の長・短音階や半音階、アルペジオ等、アーティキュレーションもからめて練習してみてください。
それと、アルトやテナーなど他のサックスから転向してきた人ですが、オクターブキィを押した「レ」がひっくり返って外してしまうことがまれにあります。これはオクターブキィを押す音域をずいぶん上だとイメージしてしまった結果だと思います。やはりこれも下の「ソ」等と同じ感覚で吹くと良いでしょう。