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ランクアップ講座 -サックス-

Navigator:新井 靖志 / 田端 直美 / 貝沼 拓実 / 大津 立史

テナーサックス

Navigator:貝沼 拓実 T a k u m i K a i n u m a

貝沼拓実 

東京藝術大学音楽学部器楽科を首席で卒業。安宅賞、アカンサス音楽賞受賞。同大学大学院修士課程修了。第22回日本管打楽器コンクール・サクソフォン部門第2位入賞。ノナカ・サクソフォン・コンクール、クラシック部門第3位入賞。2006年には世界最高峰のサクソフォンコンクール、第4回アドルフ・サックス国際コンクール(ベルギー・ディナン)に於いて第3位に入賞し、国際的にも高い評価を得る。クローバー・サクソフォン・クヮルテット、テナーサクソフォン奏者としても各地でリサイタル等の活動を行なっている。シエナ・ウインド・オーケストラ、テナーサクソフォン奏者。これまでにサクソフォンを冨岡和男、須川展也、野原武伸の各氏に、室内楽を中村均一氏に師事。洗足学園音楽大学、くらしき作陽大学、尚美ミュージックカレッジ専門学校ディプロマ科、東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校講師。

初めて楽器に触れる人に覚えてほしいこと3つ

①まずは楽器の組み立て方からです。

マウスピースには欠けたままのリードをつけていたり、楽器の調整がきちんとされておらず、タンポの塞がりも悪く、音が出にくそうな楽器を一生懸命吹いている可哀想な新入生をよく目にします。何事も初めが肝心! まずは先輩方が楽器やリードのコンディションを必ずチェックしてあげましょう! 特に本体は低音域から高音域までスムーズに音が出るように事前に吹いてチェックしてあげましょう。そしてマウスピースもリードも、もちろん楽器本体も(!)丁寧に、優しく扱うように教えてあげましょう。学校によってはアルトのメンテナンスはバッチリなのにテナーは酷い状態、なんてことがなぜかよくありますので……

では組み立てていきます。まずマウスピースにリードをセットしますが、その際リガチャーを先に装着して、その後リードを上からセッティングしましょう。というのはマウスピースとリードを先に密着させて、その上からリガチャーをセットしようとすると大切なリードにリガチャーが当たってしまい割ってしまう可能性があるからです! それからリガチャー装着後にリードをセットする時に、リードの先端を指で触ったままの状態で押し込むようにセットするという恐ろしい光景をよく目にします(写真①)。

【写真①】


サックスリード

 

 

リードを持つ時は下半分を持って先端には触れないように気をつけます。リガチャーはマウスピースに入れたら少し上にずらして、その上からリードを入れて指でずらしながらうまくセットしましょう。マウスピースとリードの先端が大体揃うか、少しマウスピースの黒い部分が見える位の位置にセットできると良いと思います。

②マウスピースをセットマウスピースの準備が完了したら次はネックにマウスピースをセットします。

その際ネックの根元を持ってしまわないように注意しましょう(写真②:左)。必ずネックの真ん中あたりに片手を添えてからマウスピースを入れるようにしましょうね(写真②:右)。

 

【写真②】

テナーサックスのネックはその形状から特に下にグニャリと曲がってしまいやすいのです!! その光景を何度も目にしたことがあります。ネックと本体をセットする時も同様です。必ず片手を添えることを忘れずに! また音程を調整するときにネックのコルクの部分でマウスピースを入れたり抜いたりする時も必ず片手を添えてくださいね!! 一度曲がってしまうと直してもすぐに曲がりやすくなってしまいます。

無駄な力を入れてセッティングすることがないよう、コルクグリスやスライドグリスも用意してスムーズに、楽器に優しくセットしたいですね。

③リードに関してお話ししましょう。

まず初心者の人にはとにかく吹きやすく、音がスムーズに出るリードを事前に選んであげることが大切です。その際、その人の楽器・マウスピースの吹奏感に合わせて選んであげると良いでしょう。リードの硬さも必ず3½が良いとは限りません。

初心者には2½や3の厚さが適切だと思います。特に身体が小さな人や始めたばかりでまだ息の吐き方が消極的なうちは2½でも良いと思います。自分を基準に考えすぎず、その人にあった厚さを音を聴きながら一緒に考えて、少しずつトレーニングできるように。またよくあるケースとして先輩からもらった大切な1枚のリードを永遠に使い続けている、という健気な少年少女をお見かけするときがあります。

リードは常日頃必ず複数枚をうまくローテーションしながら使うことも教えてあげてください。箱から開けたら使う前に上から下から、リード全体を舐めて湿らせてから使用します。新しいリードは毎日少しずつ水分を馴染ませ、リードの状態が安定してから使うようにします。

ちなみに練習が終わったら水分を含んだままにせず、ある程度乾燥させてから(これが重要!)しまう習慣を身につけましょう。その際リードは裏面を上にして置いて乾燥させるのが良いと思います。リードは水分を含んで→しっかり乾燥して、を繰り返すことによって育っていき長持ちするものなのです。意外に「乾燥させてあげる」という意識が薄い人が多いのでビチャビチャに湿ったままリードケースにしまわないように気をつけましょうね。

 

音を出してみよう!

①楽器を組み立てたらいよいよ音を出してみましょう。

まずはアンブシュア(楽器を演奏するための口の周りの形、状態のこと)をしっかり整えるところから始めます。マウスピースをくわえずに口をすぼめながらはっきりめに「ウー」と声を出して言ってみましょう。口の周りの筋肉が真ん中に向かって集まってくるのが実感できると思います。そして今度は声を出さずに息だけ細く速くそのまま「ウ」の形のまま「トゥー」と出してみましょう。

「ト」を言う前に舌が上アゴにくっつくのがわかりますか? くっついた後に「トゥー」と発音することで舌が離れて息が出ます。これがタンギング(舌がリードの先端に触れたり離れたりすることで音を区切ったり発音を明確にするための動作)のイメージです。

②さぁ、イメージが固まったらマウスピースをくわえてみましょう。

まず上の歯をマウスピースの先端およそ1cm〜1.5cmあたりを目安にしっかりと上の歯を固定しましょう。くわえる深さは噛み合わせによって人それぞれですので、後で音を出すときに息がスムーズに吐けるポイントを見つけて調整します。

次に下の歯を下唇で中に軽く巻き込み、下唇を真ん中に寄せる意識をもって硬くしっかりと張りましょう。この「張り」がないと下アゴにシワが寄ってしまいやすく、リードに余計なストレスがかかることで音の響きが損なわれてしまうので、口笛を吹くときと同じイメージでマウスピースに向かって口の周りの筋肉を中心に向かって寄せるように意識します。

くわえたら上の歯と下の歯の位置が大体揃うようにしますが、これも噛み合わせによって人それぞれですのでイメージで大丈夫です。あくまで息がスムーズに出ることが肝心。これでアンブシュアができあがりましたね? そうしたら先程と同じように「トゥー」とタンギングしながら音を出してみましょう。初めのうちは息を吸い過ぎないようゆっくり吸って、リラックスして音を出してみましょうね。

③次に楽器の構えです。

まずは椅子に浅めに座って目線を前に真っ直ぐ前を向いてみましょう。そのときアゴが突き出ないよう、ほんの少し引き気味にしてみましょう。その真っ直ぐな目線を変えないまま楽器をゆっくりと自分のほうに寄せてきましょう。

その時にマウスピースがスムーズに口に入る高さにストラップを調節します。ストラップが低くて楽器の高さに自分が合わせにいってしまっている人は身体が前に傾いてしまいがちです。特にテナーサックスはこの姿勢で演奏している人を多く見かけます。あくまで自分に楽器を寄せてきて正しく構えましょう。

 

※こちらの記事は、Wind-i vol.5を一部抜粋し掲載しています。

 CONTENTS

◆1ページ:ソプラノ・サックス 新井 靖志
◆2ページ:アルト・サックス  田端 直美
◆3ページ: テナー・サックス 貝沼 拓実
◆4ページ:バリトン・サックス 大津 立志

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