山元康生の吹奏楽トレーニング!│第7回
確実な上達に必要なこと
【譜例5】ではF Majorを例に具体的な練習方法を示しておきます。
1週間、1つの調で練習したら翌週は他の調で練習しましょう。
1【譜例1】で「レガートで演奏するときよりもタンギングで演奏するときの方が音が悪くなりやすい」と書きました。これは、スラーとタンギングで同じ音質で吹けているかを確認する「比較エクササイズ」です。
2 同様にスラーとダブルタンギング、あるいは「KKKK」で同じ音質であることを確認します。
ダブルタンギングの場合、「Tu」よりも「Ku」の方が不明瞭になりやすいです。「Ku」を強化するのではなく、「Tu」のときに舌をしっかり押しつけてタンギング(昔のドイツ風!?)しないようにしましょう。
アラン・マリオン氏(元・パリ音楽院教授)は、「Du-Gu」「De-Gue」「Di-Gui」「Ti-Li」など、いろいろな子音でタンギングしてみることを勧めていました(この記事では以後も「Tu-Ku」、「T-K」または「t-k」で表します)。
口の中は常に狭くしておいてください。これにより舌の挙動が小さくなり、速いタンギングが容易になります。また、タンギング1回あたりに出る空気の量が少なくなり、スタッカートが明瞭になります。
フランスでは「タンギング」という言葉より「デタッシェ」をよく使います。「Detache」とは「切り離された」という意味で、前後の音と離れてなければなりません。
イタリア語の「スタッカート」も同じ意味です。
ちなみに「アーティキュレーション Articulation」は、「明瞭な発音」という意味です。
空気を出しすぎると音符1つ1つが長くなって明瞭ではなくなるので、気をつけましょう。
3 トリプルタンギングの練習です。
前述のマリオン氏は「アメリカのフルーティストは『トリプルタンギングは必要ない』と言っているが、トリプルタンギングをたくさん練習しなさい。なぜならトリプルタンギングはダブルタンギングより難しいので、上手になるとダブルタンギングが簡単にできるからだ」と教えていました。
事実、3連符=192ぐらいまでできるように練習すると、4連符のダブルタンギングが同じテンポで楽にできるようになります。これは、時間をかけて少しずつテンポを上げて練習する価値があります。「ダブルタンギングが上手にできてからトリプルを練習する」という日本人の方法と、まるで逆なのが面白いですね!
4 トリプルタンギングでは不可能なほど速い3連符には、このコンビネーションタンギングが役立ちます。
アメリカのフルーティストが「トリプルタンギングは必要ない」と言ったのは、このタンギングを使うことを意味しています。大変有効なタンギングですので、是非できるようになってください。最初は括弧に入ったアクセントを付けて「K」のところを意識してみましょう。慣れてきたら5のように3連符ごとに音を変えて指とタンギングを合わせていきます。
6「K」で始まるダブルタンギングです。
このパターンは「TTKで始める」と教える先生が多い中、私がパリで師事したレイモン・ギオー先生が勧める方法で、大変合理的です。
「TTK」や連続するトリプルタンギングでは、「T」が続くとシングルタンギングになってしまって速いタンギングが困難になります。それを、この方法では一気に解決することができます。このエクササイズで慣れたら、7→8と進んで技術を定着させましょう。
レパートリーへの応用例
【譜例6】で実際のタンギングを示しておきます。
1 これはすごく速いのでトリプルタンギングでは不可能です。コンビネーションタンギングを使う以外には方法がありません。口の中を狭くすることも忘れないように。
2~4モーツァルトはレイモン・ギオー式タンギングで簡単に解決です。
5、6 タイに続くダブルタンギングも、これで解決!
7 様々なタンギングの総合練習だと思って挑戦してみてください。
前回の「音程のコントロール」で、「音が良ければ音程は自然と良くなる」に対して、「正しい音程が楽に取れる吹き方を探していけば音は良くなる」という「逆もまた真なり」を書きました。
今回は「音が良ければタンギングは立ち上がる」と書きましたので、逆はどうなるのでしょうか?
答えは「タンギングを正しい方法で、たくさん練習すると音は良くなる」ということになりますね!
「音」「音程」「タンギング」は、それぞれ独立した技術ではありません。
次回は「指のトレーニング」について説明します。これも独立した技術であるわけがありません。何が必要になるのでしょうか?お楽しみに!
練習するときには、常に「葛根湯」を役立ててください。