フルート記事 山元康生の吹奏楽トレーニング!│第8回
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山元康生の吹奏楽トレーニング!│第8回

LESSON

良い音で練習することの重要性

ここまでC Majorの音階を丁寧に練習して、自信がついたことと思います。
これから【譜例1】の練習方法を紹介していきます。

【譜例3】
 
 
 
 
 
 

【譜例3】ではA♭ major (日本語では何と言うのでしょうか?)を例に説明していきます。
まず、このような基礎練習ではB♭の時にブリチャルディキィやAisレバーは使わず、右手人差し指を使います。
ブリチャルディキィやAisレバーは指使いを易しくするための便利なキーなので、基礎練習では楽をしないで吹きます。
また、E♭2では必ず左人差し指を離してください。
これがまだ習慣付けられていない人は、連載第2回のエクササイズを練習しなければなりません。

良い音で練習しなければならない理由

難しいエクササイズですが、常に良い音で吹かなければなりません。
スイスの巨匠、ペーター=ルーカス・グラーフ氏の著者『チェックアップ』の最初に「どの課題も音の練習とみなし、そのつもりで練習しましょう」「常に出したい音のイメージをできるだけはっきり思い浮かべ、自分の音をよく聴きましょう」とあります。
難しいことですが、決して悪い音で練習してはいけません。
なぜなら悪い音で練習する事ことは「悪い音で吹く練習」になってしまい、練習すればするほど悪い音で吹くことが上手になってしまいます。恐ろしいですね!
時間をかけてロングトーンを練習した後に「音の練習はおしまい。次は指の練習だから音質、音程はどうでもいい」と思っては何のための音作りかわかりません。
私の学生時代の恩師、小泉剛先生は「音が悪いと指は動かないよ」と教えてくださいました。確かにそうなのです。その理由を私になりに考えてみました。

最初の音を出すために、まず指を動かすように脳から「Go」の信号が出ます。そして指が動いて息を送って音が出ます。それを自分の耳が聴いて脳に「行動完了」の信号を送ります。
そして次の指を動かす「Go」の信号が送られて次の音が出るわけです。
これだけの作業を一瞬のうちに行なうとは、人間の能力は素晴らしいですね!

音が悪いと耳で良く聴き取れず「行動完了」の信号が脳に送られません。
しかし次の音を吹かなければならないので「見切り発進」で次の信号が送られて指を動かす事になります。これが続くと正確に行動できなくなります。

音の出せない部屋で指だけ動かしても良い練習にならないのと、ほぼ同じ状態です。良い音で練習することは正確で美しい演奏につながります。
また、指を速く動かすと楽器の構えが不安定になって音が悪くなりやすいので、右手親指の位置をチェックして、楽器を構えるために右手小指に依存することのないように心がけてください。

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