山元康生の吹奏楽トレーニング!│第8回
足部管の操作も正確に
【譜例1】と【譜例3】では、全体練習のA、高い音域の部分練習B、足部管を正しい運指で操作するCがセットになっています。全体練習Aの前に難しいBとCを練習してしまえばAは比較的スムーズに吹けるようになります。
まずBを練習していきましょう。
【譜例2】でも練習したように1aを指が迷わないように、ゆっくり部分繰り返し練習をします。最低でも、それぞれ4回は吹いてください。
高いB♭3は前述のB♮3と同様に右手小指を離すのが正しい運指ですが、ここでは押さえたままで構いません。
次に1aで細かく分割したものを1bで少しつないで、循環させるために1cも練習します。
それぞれ良く練習したら1dは簡単に吹けるはずです。
2ではBにある12個の音符を4連符×3とみなして分割練習します。『4つの音のためのリズム変奏』の②を利用すると2aになります。
他のリズムパターンでも練習してください。
3では1の2個目の音、E♭3からスタートして最初の音に戻ってきます。
こうすると同じ動きのはずですが、何だか別のエクササイズを練習しているような感覚になります。
3aのような分割リズム変奏、4 4aのように4連符とみなしての練習も、より効果が上がります。
同様に5~7のスタートをずらした練習をリズム変奏したり、4連符とみなして練習すると自信が付きます。
8からは足部管を操作する練習になります。
指のフォームに気をつけて8a 8bを、ゆっくりとしたテンポで練習します。最初から上手く吹ける人などいません。手首を動かさず、小指だけを動かして練習します。
BとCを練習した後に全体練習であるAを練習します。
全体を通す前に【譜例2】のように分割練習を行なうのが良いと思います。
調性のローテーションについて
1日に5つのすべての調を練習することは不可能ですし、その必要もありません。最初の1週間で1つの調を丁寧に自信がつくまで練習して、翌週に次の調に替えましょう。そうすると5週間ですべての調を練習することができます。
その後は3日ごとに次の調に進みます。
5×3ですから、2週間と1日で5つの調を練習できますね?
あるいは「月・火・水」「木・金・土」で2つの調を練習して、日曜日は2つのうち難しいと感じた調を復習しても良いです。
その後は「月・火」、「水・木」、「金・土」で日曜日は、どれかを復習。そこからはさらに、毎日調を替えて練習します。
ここまで来ると、いつでも、どの調でも吹けるようになっていると思います。
小指のためのエクササイズは“筋トレ”
音階練習とは別に、小指のための日課練習を行ないましょう。丁寧に練習できるように、もう一度リズム変奏をエクササイズの上に示しておきました。
毎日、それぞれのエクササイズを、ゆっくりとしたテンポで、しかし速い動きで練習してください。トレヴァー・ワイ氏の「フルート教本」の通り、小指は常に曲がっていなければなりません。
E♭では最も指が丸くなり、D♭では少し伸びますが、最低音のCでも、ピンと伸びず、少し曲がっていることを意識しましょう。(画像3~5)
指の腹でキィを押さえると伸びてしまいます、ピアノを弾く時のように、指の頭で押さえるのです。
これができないと、小指を上手く滑らせることができません。
これまで何度も書きましたが、最初から上手くできる人などいません。1日に数分、根気良く練習を続けてください。
ジムで筋トレして数日で逆三角形のボディになるわけがないですよね?
足部管の操作に便利な替え指はありません。
今、この練習を行なうことによって、足部管を操作できるようにしておかないと「A♭Major、E Major、F Minorなどの音階が吹けないフルート奏者」として一生を終えることになりますよ!
では、練習していきましょう。
それぞれのエクササイズを、手首を動かさずに小指だけを動かして吹いてみます。
1a 2a 3aよりも1b 2b 3bの方が難しいですね。
1b~3bは小指の水平の動きだけではなく、同時に薬指の垂直運動を行なわなくてはならないからです。
1a-①、1a-④のように、リズム変奏を利用して小指を鍛えてください。
今回は「分割練習」「繰り返し練習」「結合→循環練習」「スタートする音をずらす練習」「12の音を6×2、4×3と感じる練習」「リズム変奏による練習」を紹介しました。
これらを利用して5つの調性の音階を自由自在に吹けるようにしておくと、吹奏楽の難しい部分が驚くほど早く攻略できます。
今、練習しておくと今後、楽できるのです。
次回は最終回「難しいパッセージの攻略法」です。
今回の練習方法を、さらに発展させ、アーティキュレーションと組み合わせて応用しやすくなる方法を紹介します。
どうぞ、お楽しみに!