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THE FLUTE vol.167
特別企画 万能の巨人! テオバルト・ベーム
ベーム式フルート完成から日本では4つの時代を迎え、平成も末期となった。この節目に、もう一度当時の内容をふり返り、あらためてフルーティストの“父”テオバルト・ベームの偉業に思いを馳せる。
対談:ベームの一生、それはフルートに捧げられた より
播博×中山早苗
これがベーム時代のフルートだ!
- 播
- もともと“ベーム式”というのは、運指法のことをさす言葉だったんですね。現在のキィと同じく、順番に押さえていけばドシラソファミレドと音階になっていく運指法を意味していたんです。
―中略―
- 播
- もともと“ベーム式”というのは、運指法のことをさす言葉だったんですね。現在のキィと同じく、順番に押さえていけばドシラソファミレドと音階になっていく運指法を意味していたんです。
ベーム式は、改良によってこれまでは吹けなかった調性も演奏できます。しかし、高音と低音の響きが悪いということで、本人はだんだんこれでは満足できなくなってきました。さらに改良を重ねたうえで、フランス人のゴットフロイにパテントを売ったんです。
その後、パリのコンセルヴァトワールの先生をしていたドルユースが、ベームの楽器をもとにして左手の小指のキィを改良し、クローズGis式を作りました。 - 中山
- かなり現代のものに近い形になっています。角度も現代のものと一緒ですか?
- 播
- そうです。とても合理的になっている。ベーム式フルートが生まれてから今年で162年(注:1994年の対談当時)になりますが、最初にベームが作った形に、このドリュースのGisキィが加わり、その後、左手のBのブリチャルディキィができたんです。
アルトフルートの開発も手がけていた
- 播
- ベームはミュンヘンで生まれてそこで亡くなっているんですが、死後50年くらいはドイツ国内ではあまり顧みられなかったそうです。フランスのコンセルヴァトワールでは、ベームが改良した楽器をいち早く採用しているというのに……。
実は、アルトフルートがベームの発明だということも意外に知られていないんです。 - 中山
- そうですね。私もフルート協会の会報を読んで初めて知りました。
- 播
- 1858年頃に完成して、大変気に入っていたらしい。人間の声に非常に近いというので晩年の20年間、毎日のように吹いていたそうですよ。曲も数多くあります。作品番号のない45曲のうち、約半分がアルトフルート用の楽譜です。
- 中山
- その楽譜はまだ出版されていないんですか?
- 播
- 全集に含まれています。これらの曲を、フルートを吹く皆さんにぜひ知ってほしいですね。