大山日出男のJAZZ入門
THE SAX誌(27-33号)で好評を博した連載、「大山日出男のJAZZ入門」。日本を代表するサックス奏者、大山日出男氏がスタンダードを題材にコード進 行の捉え方やフレーズの組み立て方などをレッスンしたものだ。そのエッセンスをお伝えすべく、大山氏が語った「アドリブ上達のための考え方」をご紹介しよう。
それでは、連載の「序章」の中から一部を抜粋してご紹介しよう。
大山氏は語る。
【ジャズ音楽に関して「始めたいけれど、何から練習すればよいかわからない」「取り組んでみたけれど、難しすぎて挫折してしまった」などの悩みが多く聞かれます。この講座ではジャズのスタンダードナンバーのアドリブ(即興的にメロディを作る)を含めて、一体どのように演奏していくのかを皆さんと一緒に考えていきましょう。】
ジャズ、特にアドリブを習得するためには、コピーをすることが重要だといわれる。
【コピー(ジャズなどの演奏、主にアドリブ部分を自分の耳を使って採譜)と呼ばれる作業は、ジャズを習得するためにとても大切なことです。僕も、学生時代には多くの曲をコピーしました。しかし(中略)僕は、最初はこのコピーという作業が大の苦手だったのです】
しかし彼はくりかえしコピーに取り組み、多くのものを得た。
【自分の耳で採譜する重要性を感じて、クインシー・ジョーンズのビッグバンドにおけるフィル・ウッズのソロをコピーしました。最後まで完成できたかどうか甚だ心もとないのですが、明らかに自分のアドリブソロに音楽的な深みが加味されたことを理解しました】
そして、アドリブソロの発想の源に思い至る。
【コピーは採譜した小節数ではなく、1曲にたずさわった時間の長さこそ重要だということです。例えば耳の良い人なら、曲を1回聴いただけでコピーを完成させてしまうかもしれません。しかし、それが自分のものになっているとは限りません。それは長く気持ちに留まることがないためです。
反対に4小節を1日かかって採譜した人がすべての音を採譜できたころには、サックスのニュアンスやタイミングはもちろん、その時どんなドラムが鳴っていたか、ベースのフレーズはどうだったかということまで覚えている可能性が高いのです。
具体的に記憶していなくとも、心の深い部分には何らかの形で残ります。実はアドリブのアイデアは、この部分を源泉として湧き上がってくるものです。だから、音感の良し悪しは二の次です。劣等感を持つことなく、一つのメロディだけでも長い時間付き合ってみることを強くお薦めします】