國末先生に教えてもらおう!吹奏楽サックス、上達のコツ Special
93号からQuatuor Bなどで活躍中の國末貞仁先生による、吹奏楽大好きな人のためのビギナーレッスンを開講します! 吹奏楽で吹くのは好きでも、苦手なテクニック、奏法……ありますよね? そこで、ここではビギナーのために役立つテクニックを各号テーマを決めて國末先生がレッスンをしてくれます。
Q6.プロになってからも欠かさない基礎練習は?
スケールを様々なアーティキュレーションで練習など
時間がある時は、スケールを様々なアーティキュレーションで練習するようにしています。さらに余裕があればタンギングとヴィブラートのトレーニングをするようにしています。須川先生のサクソフォーンのためのトレーニングに載っている練習を今でもやります。あとは、昔やったエチュード(練習曲)に取り組んだりしますね。
ただ、正直なところ、現状ではそんなに長時間の練習時間を確保するのが難しいので、大半の時間は本番が近い曲の練習に当てています。なので、基礎練習は疎かになってしまっているかもしれませんね。
Q7.吹奏楽部、吹奏楽団を指導している時に、サックスパートにどのような指導をしますか?
生徒たちは課題を自ら考える!
基本的にレッスンの際は、生徒たちに課題を自ら用意してもらうことにしています。レッスンは、受け身の姿勢で受けてもあまり効果が得られないと思うからです。それぞれの生徒の力量に応じた指導をすることを心掛けています。
オススメの教則本や練習曲集は以下の通りです。
このように段階的にステップアップしていきます。
僕も楽器を始めてから音大受験までこの順番でエチュード進めてきました。
正直エチュードはとっても苦手でしたが……。
これをしっかりやっておくと、後々血となり肉となるのです。
初心者の生徒や初めて教える生徒には、基本的に以下の順番で指導します。
最近では、生徒が演奏している姿(アンブシュア、姿勢など)をスマートフォンで写真や動画を撮って、その場で見せるようにしています。
客観的に自分の現状を把握することで、どういう問題点があるのかを意識させることができます。レッスンの後も自分でチェックできるようになってもらうことが狙いです。
Q8.吹奏楽部、吹奏楽団のサックスパートにこれだけはやめてほしいことはありますか?
不幸な負のスパイラル!? 楽譜やCDの違法コピーはやめましょう。
これはサックスパートに限ったことではありませんが、楽譜やCDの違法コピーはやめましょう。
よく吹奏楽の楽譜にいろんな学校のハンコが押してあるのを見かけることがあります。完全に違法行為です。読者の皆さんの中に身に覚えがある人もいるのではないでしょうか?
悪気なくしてしまっていることが不幸な負のスパイラルを生んでしまうのです。
どんなことが起きるか想像して考えてみましょう。
楽譜をコピーする→楽譜が売れない→出版社が倒産→作曲家は作品を書いても収入が得られない→作曲家が廃業→新しい作品が生まれなくなる→吹奏楽が衰退……悲しいことですね。
これからも作曲家の皆さんに素晴らしい作品を生み出してもらうためには、一人一人が高い意識を持つことが必要なのだと思います。
Q9.中学生だと体が小さい生徒もいますが、楽器の構え方や息の出し方などどのような注意をされますか?
姿勢に気をつけることと体力づくりが大事
中学生はまだ成長段階で身体が小さいため、楽器の重さをきちんと支えられるだけの十分な筋肉がまだ付いていない子も多くいます。
そういう子は、どうしても演奏する時の姿勢が前屈みになってしまったり、首が前に出てしまったりします。
鏡の前で、自分の演奏する姿を見ながら練習することを勧めています。
息の使い方については、サックスは実は管の細い楽器なので(ネックの先を見てみてください!)、必要以上に無駄な息を吹き込む必要はないのだよ、と話したりします。身体が小さくたって大きい音が出せる! それがサックスです! 実は僕も中学に入学したばかりの頃は身長が139cmほどしかありませんでした。でも、中学時代に30cm以上身長が伸びたんですよ!
その頃は、部活で楽器を練習する前に学校の外周を走ったり、腹筋や背筋を鍛えるトレーニングをしたりしていました。その時は、「キツイな〜、何でこんなしなきゃいけないんだろう?」と思っていましたが、今考えればその時のトレーニングは重要だったのかな、と思います。基礎体力をつけることは楽器を演奏する上で、非常に大事なことです。 それから、使う道具も大事です。身体への負担の少ないブレステイキングのストラップをお薦めします。
Q10.吹奏楽のサックスパートに是非やっていてほしいパート練習を教えてください。
年間を通して、サクソフォンのアンサンブルの曲に取り組むこと!
アンサンブルコンテストの時期だけではなく、年間を通してパート練習でサクソフォンのアンサンブルの曲に取り組むようにしてほしいです。
例えば、簡単な曲でいいので、デュオ(二重奏)やトリオ(三重奏)、カルテット(四重奏)など、様々な形態でのアンサンブルに挑戦してみてください。
パート数が少なければそれぞれの役割も把握しやすいし、吹き方のニュアンスを合わせたりするのも大人数で演奏する時よりも比較的合わせやすいはずです。
余裕があれば毎月1曲課題曲を決めて取り組んでみると、1年間に12曲のレパートリーができますよ! 練習時間は限られているし、合奏で演奏する曲も練習しなければいけないので、なかなか大変だとは思いますが、ぜひチャレンジしてみてください。
オススメの曲集は、以下の通りです。
1.「やさしいアルトサックス・デュオ Vol.1 スタンダード80曲」(アルソ出版)
2.「ふたりでSAX Vol.1 楽しく吹こう、いつだって」(アルソ出版)
3.「ふたりでSAX Vol.2 その音で、ハートを揺らせ」(アルソ出版)
4.「ザ・カルテット サックスの王道レパートリーを吹きこなせ」(アルソ出版)
5.ジャン=マリー・ルクレール(ジャン=マリー・ロンデックス)/2つのヴァイオリンのためのソナタ ハ長調(Alphonse Leduc)
5.ジャン=マリー・ルクレール(ジャン=マリー・ロンデックス)/2つのヴァイオリンのためのソナタ へ長調(Alphonse Leduc)
また、時には違う楽器の友達にお願いしてデュオなどのアンサンブルをやってもらったりするとさらに良いと思います。
サックスだけで練習していると、サックスの“お家の事情”についつい合わせてしまうので、サックス以外の楽器とアンサンブルをした時に、イントネーションや発音が合わせられない、なんてことにもなりかねません。
サックス以外の楽器のことを知ることで、サックスの“癖”に気づけると思いますよ。
そうすれば吹奏楽の中での演奏の仕方も変わってくると思います。
●2ページを読む
Q1.現在活躍している団体や活動を教えてください!
●3ページを読む
Q2.國末先生がサックスを始めたきっかけは?
Q3.サックスをはじめた頃に練習されたことは?
Q4.いつ頃からプロ奏者を目指しましたか?
Q5.不得意だったテクニック・奏法などありますか?
●4ページを読む
Q6.プロになってからも欠かさない基礎練習は?
Q7.吹奏楽部、吹奏楽団を指導している時に、サックスパートにどんな指導をしますか?
Q8.吹奏楽部、吹奏楽団のサックスパートにこれだけはやめてほしいことは?
Q9.中学生だと体が小さい生徒もいますが、楽器の構え方や息の出し方などどのような注意をされますか?
Q10.吹奏楽のサックスパートに是非やっていてほしいパート練習は?
●5ページを読む
Q11.吹奏楽愛好家に聴いてほしい、吹奏楽団、アンサンブル、サックス奏者のCDは?
Q12.吹奏楽の魅力、クラシカルサックスの魅力を教えてください。
國末貞仁
Sadahito Kunisue
1978年、香川県高松市生まれ。神奈川県横浜市在住。香川県立高松高等学校、東京藝術大学を経て、同大学院修士課程修了。これまでにサクソフォンを、西宇徹、須川展也、石田智子、二宮和弘、冨岡和男の各氏に、室内楽を中村均一氏に師事。2005年、第22回日本管打楽器コンクールサクソフォン部門第3位入賞。2010年、平成21年度香川県文化芸術新人賞受賞。Quatuor B、Trio YaS-375、Saxaccord、シュピール室内合奏団、BRASS EXCEED TOKYOのメンバーとして活動するほか、サキソフォックスのラトゥールくんのお友達としても全国各地で活躍中。現在、京都市立芸術大学、洗足学園音楽大学非常勤講師。また、2013年より高松市観光大使に就任し、故郷のPRにも力を注いでいる。