Close-Up Interview 米倉森
10年に渡るドイツ生活を経て、2022年に日本へ完全帰国をしたクラリネット奏者 米倉森。ドイツで磨かれた抜群の音色感と豊かな響きは世代トップと言っても過言ではないだろう、次世代をけん引する奏者だ。帰国してから間を置かずに各地で演奏活動やレッスンを精力的に行なうエネルギッシュさ、多くの人から求められる彼女の人柄、そしてクラリネットにかける熱い想い。彼女はどのようにして「クラリネット奏者 米倉森」となったのか、前後編に渡るロング・インタビューでじっくりと話を聞いた。
米倉森
Mori Yonekura
秋田県立能代高校、武蔵野音楽大学卒業、ドイツ ハンス・アイスラー音楽大学ベルリン修士課程を首席で修了。第4回チェコ国際クラリネットコンクール入選。これまでにクラリネットを安藤満里、山本正治、Prof.Martin Spangenberg、Prof.Ralf Forsterの各氏に、室内楽をProf.Shirley Brill、吉岡アカリの各氏に師事・WISH Wind Orchestraコンサートミストレス。2016年から2017年までブランデンブルク州立管弦楽団エバーズヴァルデ首席クラリネット奏者を務める。ドイツ・ベルリンにてベルリン交響楽団をはじめ様々なオーケストラで活躍。2018年ベルリン交響楽団日本ツアーに参加・これまでにドイツのみならずベルギー、スイス、ポーランド、チェコ、オーストリア、ドバイにてオーケストラ活動をする。2022年ドバイにて、ドバイ IN CLASSICA国際音楽祭にオーケストラメンバーとして参加。ギル・シャハム氏、ファジル・サイ氏らと共演する。ショスタコーヴィチ音楽学校にてクラリネット講師を務める。2022年9月末に10年間のドイツ生活を終え日本に帰国。
迷わずベルリンを選んだ
ちなみに、高校二年生のときに父にビュッフェ・クランポンのRCを買ってもらったのですが、ドイツで就職するときまでその楽器をずーっと使っていました(笑)。あとは、ドイツ留学の途中から山本先生にビュッフェ・クランポンのフェスティヴァルをお借りしました。11年ほど。
初めてドイツに行ったのは大学四年生のころだったかな。オスナブリュックという地域で開催されているマスタークラスのシリーズで、フランソワ・ベンダ教授のマスタークラスを受講しました。ベルリン芸術大学やスイス・バーゼル音楽院で教えている方で、とても感銘を受けたのでベルリン芸術大学に留学を考えたのですが、彼はお住まいがバーゼルで、ベルリン芸術大学は客員教授という形で1、2ヶ月に1回しか来ないんですね。せっかく留学をして、クラリネットのために生きると決めた大学生活を送るのであれば、週1でもいいので常に先生がそばにいる環境のほうが自分にとってよりよいだろうと思ったので、ベルリン芸術大学ではなくてハンス・アイスラー音楽大学ベルリンを選びました。受験の3ヶ月前に渡独しまして、受験準備の他に週5で通う語学学校にも入学しました。それまでももちろん勉強していたのですが、しっかり学ぶのはそのときが初めてで、その頃は一日中ドイツ語とクラリネットのレッスンでしたね。午前はドイツ語、午後はクラリネットの練習。今にしてみると、この3ヶ月間が本当にとても充実していて、よかったんだなって思います。今でもネイティブにドイツ語が喋れるのも、当時しっかりと勉強したおかげですね。ドイツ語の通訳の仕事を頼まれることもありますし、楽器以外で自分が頑張って身につけたスキルを活かせるのは、とても嬉しいです。