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Close-Up Interview
Close-Up Interview 米倉森
「就職したので休学します」
「就職したので休学します」
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学生の雰囲気やレッスン内容などは、日本とドイツで違いましたか?
米倉
違うと思います。学生の国際色が豊かですね。私が行ったときは外国人は私だけでしたが、それからトルコ、中国、韓国と、各国のスターって感じの人が集まってきました。倍率がものすごく高いんですよ。一年に二回、夏と冬に入試があるんですけど、私の時は約50人く受けて合格したのは私だけでした。毎回それくらいの倍率ですね。少ない時でも3、40人はいました。 ハンス・アイスラーでは、それぞれの先生が受け持つことができる生徒数の枠(プラッツ)が決まっているんですね。例えばその枠が14人ですでに満席だったら、4年生が卒業して枠が空かないと取ることができない。なので、受験が開催されても結局誰一人取ることができないということもあります。でもこれがなかなか面白いシステムで、合格点が出たら受験自体には合格できるんです。あとからそのプラッツを貰えるのかが先生の状況次第なので、合格はしたけど結局次のゼメスターまで待ったという人もいますね。たまたま3人卒業した年もあれば、一人も卒業しない年もありますから。 それと、学費がほぼ無料であることと、休学がとてもラフに取れることがあって、なので就職が決まるまで休学するとかも多いです。休学中も練習室は借りられます。私も、働いている時は仕事が忙しかったので、丸々2年休学していました。学業のみを目的に入学された方は2年、4年としっかり勉強して帰国されていきますが、そうでない場合は皆さんフルに休学システムを使っていると思います。
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日本の大学とはまったく環境が違いますね。
米倉
そうなんです、厳密には施設利用費とゼメスターチケットいうもので年間3万円ほどはかかるのですが。ゼメスターチケットというのが学生証みたいなものなので、これがあるとベルリン市内の公共交通機関にすべて乗れる、言わば定期券ですね。なのでもう、破格というか、タダみたいなものです。だからハンス・アイスラーは、ドイツ国内からはもちろん国外からも優秀な学生が大勢受験するんです。特にヴァイオリンのクラスが超高倍率になりますね。なにしろ先生方がコーリャ・ブラッハー(※1)やアンティエ・ヴァイトハース(※2)といったとにかくすごい方々で、卒業生たちも世界各地のオーケストラでコンマスを務めていますから。日本だと、岡本誠司くん(※3)もOBですね。倍率にしたら200倍くらいあるのかもしれません。恐れ多くて受験すらしない人もいると思いますよ。
※1 コーリャ・ブラッハー
元ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団でコンサートマスターを経験し、今もソリストとして第一線で活躍するヴァイオリニスト
※2 アンティエ・ヴァイトハース
現代最高峰と評されるアルカント四重奏団の第一ヴァイオリンを務める女性ヴァイオリニスト
※3 岡本誠司
約70年間、19回の開催で6名しか1位が出ていないという超難関 ミュンヘン国際音楽コンクールのヴァイオリン部門で2021年に第1位を獲得した若手ヴァイオリニスト
元ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団でコンサートマスターを経験し、今もソリストとして第一線で活躍するヴァイオリニスト
※2 アンティエ・ヴァイトハース
現代最高峰と評されるアルカント四重奏団の第一ヴァイオリンを務める女性ヴァイオリニスト
※3 岡本誠司
約70年間、19回の開催で6名しか1位が出ていないという超難関 ミュンヘン国際音楽コンクールのヴァイオリン部門で2021年に第1位を獲得した若手ヴァイオリニスト