Close-Up Interview 米倉森

クラリネットを始めたのは中学一年生のときの吹奏楽部。ザ・一般的な経歴です。母が音楽教師で、父がアマチュアのホルン吹きでしたので、音楽が常に家にある環境でした。幼少期からピアノや合唱、バレエなどをやっていて、クラリネットを始めたころはまだピアノで進学をしたいと考えていたほどにピアノにも力を入れていました。その後高校に進学してもクラリネットを続けるうちに、二年生くらいでクラリネットで進学をしたいと考え始めて。私の出身は秋田県の片田舎で、高校も県の吹奏楽コンクールに出場するくらいだったのですが、三年生になったころにようやく地元でクラリネットを教えている安藤満里先生に出会えて、そこから週1回のレッスンに通った他、月に一回山本正治先生のレッスンも受けていました。周りに比べると、遅かったのかな。そこから試行錯誤をして、色々な挫折をしながら武蔵野音楽大学に入学しました。
ちなみに、高校二年生のときに父にビュッフェ・クランポンのRCを買ってもらったのですが、ドイツで就職するときまでその楽器をずーっと使っていました（笑）。あとは、ドイツ留学の途中から山本先生にビュッフェ・クランポンのフェスティヴァルをお借りしました。11年ほど。

そうです。4年間ずっと、山本先生の元でした。父が、青森県で活動している弘前バッハアンサンブルという団体に所属していて、そこはアマチュア奏者とプロ奏者が一緒になってバッハのカンタータばかり演奏するというなかなかコアな団体なのですが、そこでファゴット奏者の石川晃さんと親しくしていたご縁で、石川さんに山本先生をご紹介していただきました。

そうですね、そこは大きいと思います。実は、山本先生からドイツ時代のお話をうかがう機会はあまりなかったのですが、それでもいざ留学を考えたときにはやっぱりドイツがいいと、だから本当に行きたかったんだなって思いますね。それから、私にとってベルリンという街がとても魅力的であったことと、ベルリンに二つある音楽大学のどちらにも惹かれたこと、ベルリン・フィルがあること……それらがあって、留学先はベルリンだと決めていました。
初めてドイツに行ったのは大学四年生のころだったかな。オスナブリュックという地域で開催されているマスタークラスのシリーズで、フランソワ・ベンダ教授のマスタークラスを受講しました。ベルリン芸術大学やスイス・バーゼル音楽院で教えている方で、とても感銘を受けたのでベルリン芸術大学に留学を考えたのですが、彼はお住まいがバーゼルで、ベルリン芸術大学は客員教授という形で1、2ヶ月に1回しか来ないんですね。せっかく留学をして、クラリネットのために生きると決めた大学生活を送るのであれば、週1でもいいので常に先生がそばにいる環境のほうが自分にとってよりよいだろうと思ったので、ベルリン芸術大学ではなくてハンス・アイスラー音楽大学ベルリンを選びました。受験の3ヶ月前に渡独しまして、受験準備の他に週5で通う語学学校にも入学しました。それまでももちろん勉強していたのですが、しっかり学ぶのはそのときが初めてで、その頃は一日中ドイツ語とクラリネットのレッスンでしたね。午前はドイツ語、午後はクラリネットの練習。今にしてみると、この3ヶ月間が本当にとても充実していて、よかったんだなって思います。今でもネイティブにドイツ語が喋れるのも、当時しっかりと勉強したおかげですね。ドイツ語の通訳の仕事を頼まれることもありますし、楽器以外で自分が頑張って身につけたスキルを活かせるのは、とても嬉しいです。