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Close-Up Interview
続・Close-Up Interview 米倉森
世代トップクラスの実力を持つクラリネット奏者 米倉森。彼女の奏者としてのキャリアはドイツ時代が中心となり、従って今回のインタビューもそのドイツ時代の話を多く聞かせてもらった。その話は音楽に関わるだけ部分だけでなく、ドイツでの生活そのものにも及んだ。さながら留学紀行のような内容となったロング・インタビューの後半をお楽しみいただきたい。
米倉森
Mori Yonekura
秋田県立能代高校、武蔵野音楽大学卒業、ドイツ ハンス・アイスラー音楽大学ベルリン修士課程を首席で修了。第4回チェコ国際クラリネットコンクール入選。これまでにクラリネットを安藤満里、山本正治、Prof.Martin Spangenberg、Prof.Ralf Forsterの各氏に、室内楽をProf.Shirley Brill、吉岡アカリの各氏に師事・WISH Wind Orchestraコンサートミストレス。2016年から2017年までブランデンブルク州立管弦楽団エバーズヴァルデ首席クラリネット奏者を務める。ドイツ・ベルリンにてベルリン交響楽団をはじめ様々なオーケストラで活躍。2018年ベルリン交響楽団日本ツアーに参加・これまでにドイツのみならずベルギー、スイス、ポーランド、チェコ、オーストリア、ドバイにてオーケストラ活動をする。2022年ドバイにて、ドバイ IN CLASSICA国際音楽祭にオーケストラメンバーとして参加。ギル・シャハム氏、ファジル・サイ氏らと共演する。ショスタコーヴィチ音楽学校にてクラリネット講師を務める。2022年9月末に10年間のドイツ生活を終え日本に帰国。
異国の地・ドイツ生活
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ドイツ留学の中でいろいろあったというお話をお聞かせください。
米倉森(以下米倉)
そうですね……いろいろと大変でした(笑)。ドイツにはクーラーがないんです。一般家庭も、カフェも、レストランも。ドイツのほうが日本より涼しいですが、それでも猛暑日になることはありますから、そうなるとみんなスーパーマーケットの牛乳コーナーとかで涼んでいるんです。暖房に関してはセントラルヒーティングが行き届いていて、建物内全体に管が繋がっているので、どこかで暖房をつけるとそのまま全館が暖かくなるんです。むしろ暑すぎるくらいですね。あ、でも外はものすごく寒いです。ドイツは高緯度なので、冬が長いです。雨も降らないから湿度も低いですし、ずっと天気が悪い秋みたいな空気です。
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ドイツはなんとなく天気が悪い印象がありますね。
米倉
それ、よく日本人に言われますね。私の家族がドイツに来たときも「なんなのこの太陽、元気ないね」って言ってました。陽の光が弱いようで、朝カーテンを開けてもあまり明るくならないとも言われましたね。ただ、日照時間が短いというのはあって、それが原因でビタミンD不足になってしまうんです。だから大人から子どもまでみんなビタミンDのサプリメントを飲んでいます。私も飲んでいました。
米倉
私は安いと感じました。少なくともベルリンは安いですね。ミュンヘンに一年のうち二ヶ月ほど公演で出張していたんですね。『魔笛』や『カルミナ・ブラーナ』などの公演が必ずあるので。ミュンヘンは物価が高くて……食事ひとつとっても、ベルリンで8ユーロくらいで食べられるところが12、14ユーロとか。観光地だからというのはありますが、一応ベルリンも観光地なので、そういう意味では観光地に優しい街なのかもしれません、ベルリンは。
米倉
絶対あります。だから間違いなくドイツ・ベルリンを留学先に選んで 良かったと思います。ドイツは医療費も基本的に無料です。保険料は高いですが、基本的に特に望まないと薬を処方されたりもせず、熱があるからと病院に行っても「リンゴを食べて寝てください」って言われたりとか(笑)。