いま注目の“♭ふらっ砥”を辻本美博が試してみました!

「♭ふらっ砥」開発の経緯

「♭ふらっ砥」を開発する前はリードを削って調整していましたか?
梅本
私は中学1年生のときに入部した吹奏楽部でクラリネットを始めたんですけど、リードにはずっと悩まされていました。1箱10枚のうち使えるのは1〜2枚、予備ぶんも入れて5枚あるかどうかという感じです。ひどいときは使えるのがまったくないということもありました。中学、高校はもう仕方ないと思っていましたが、社会人になってからサンドペーパーを使って調整するようになったんです。でも、作業も出費も大変じゃないですか。だから樹脂製リードに替えました。何も考えなくても鳴るからラクでしたね。野外でみんなと演奏するときはいいんですけど、ピアノに伴奏してもらってソロで吹きたいというときには樹脂製リードだと思ったようにはいかない。突き詰めていくと、やっぱり天然のリードなのかなと思って再びケーンを使うようになり、またサンドペーパーを使って調整していました。

 

「♭ふらっ砥」の開発に至った経緯は?
梅本
近年リードが値上がりしたことでアマチュアにとっては死活問題になっています。10枚のうち何枚使えるかが大事なので、私もサンドペーパーを使っていましたが、よくよく考えると砥石屋に勤めているので、だったら砥石を使えないかと考えたんです。これまでこういう製品はなかったんですよね。なんで誰も気づかなかったんだろうと不思議なくらいで、たまたま気づいて良かったです。元々は事務員なんですけどね(笑)。
辻本
本業と趣味がうまくマッチしたんですね。
梅本
それで弊社の技術の者に「砥石でリードを削ることはできないですか?」と投げかけていろいろ作ってもらいました。砥石は油につけて使うのが一般的で、水につけたりもしますが、技術の者にオーダーしたのは水につけなくても使えるような砥石。業界ではあまりない物なので苦労しました。
また、そもそもリードのことを知らないのでクラリネットを会社に持って行って、「これがないと音が鳴らない」という説明から始めて、いくつかのリードを吹き比べてその違いを知ってもらいました。人生初のプレゼンです(笑)。
中学校や高校ではたくさんの人がシングルリードを吹いていて、一般の人でもこんなに吹いている人がいるから絶対に評判になる。「これだけ私が困っているんだから同じ楽器を吹いている人は必要なはずだ」と会社に話をしたら、「1年で100個完売を目指してやってみては?」と言われました。発売前に私の周りの人に宣伝したことである程度知れ渡っていて、親しい人には感想を聞きたかったので試作品を使ってもらいました。その中にはプロ奏者もいました。そこで良い評価をいただいたので販売を開始しました。発売後、友人などに頼み込んだりもしましたが、2日で100個を完売しました。
ウチは工業用品しか作っていないので楽器店とのつながりがなかったんです。だから、販売に関してはまずインターネットだと思い、amazonでの販売を開始しました。あとは口コミ、SNSですよね。知ってくれたら買ってくれるという感じでした。まだご存じない方もたくさんいると思うので、これを見て知ってほしいですね。一時期、売上が停滞したのですが、サックス奏者の方がYouTubeで紹介してくれたのをきっかけにamazonでめちゃめちゃ売れたんです。
辻本
砥石は包丁などを研ぐ物ですよね? 確かに水を使いますね。
梅本
そうです。砥石は、砥粒(とりゅう)という硬い粒子、いわゆる砂状の研磨材に、接着剤の役割を果たす結合剤を練り合わせて、型に流し込んで圧縮します。それを窯に入れて焼きます。この割合などを変えたりいろいろ試行錯誤して、水を使わなくても効果を発揮できる「♭ふらっ砥」が完成しました。
初回製作の100本は角があったのですが、その後に改良を施し面取りをしました。だから、今販売している「♭ふらっ砥」は角張ってないんです。吹奏楽部の顧問の先生から、「いいものだから誰が使ってもケガがないようなものにしてほしい」と言われ、子どもたちも使うことを考えケガのないように配慮したのですが、面取りはすべて手作業なので大変です。それにコストもかかります。

 

ふらっ砥
手前が現行品、奥が初回製作分。角が取れているのがわかる
辻本
話を聞いていると、NHKのプロジェクトXっぽいですね。
梅本
それ、いいですね!(笑)。実は最初は既存の砥石でいいじゃんと言われたんです。でも、実際に使ってみると、ツルツルすぎて使えないとか、削りすぎちゃうとか、いろいろ問題が出てきて、やっぱりイチから作らないとダメだとわかりました。SNSを見ているとホームセンターで油砥石を買ってきて同じようにリードを削ってみたら使えなくなったと書いている方もいました。元々削るもの(目的)が違うので、普通に売っている砥石はすごく粗く、リードの調整には適さないと思います。

 

使用者からの反響は?
梅本
amazonの口コミに、「BクラスだったリードがAになりました」「10枚中8枚が使えるようになりました」とか書かれていてめっちゃ嬉しかったですね。いま一番嬉しいのは中学校や高校に試してもらうために「♭ふらっ砥」を持っていくんですけど、学生たちの目がキラキラしているのが嬉しくて。変わった、使える、最後はお母さんに買ってもらう、と言ってくれます(笑)。
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