いま注目の“♭ふらっ砥”を辻本美博が試してみました!

辻本美博さんのリード調整暦

辻本さんはリードを削って調整をしていますか?
辻本
以前はリードを削っていたんですけど、あるときThe Clarinet誌の赤坂達三さんの連載記事で「リードを削っている時間があったら僕は練習します」と書かれていたんです。時を同じくして、バラツキが少ないことがウリのリコ・グランドコンサートセレクトを北村英治さんからNHK BSの番組収録中にいただくという出来事がありまして。確かに削る必要がないと感じたので、徐々に削るのを止めていきました。そのような経緯でリードを削ることをやめたんですけれど、ここにきて新しい技術が登場したのであれば、食べず嫌いではなく、まずは試してみたいなと思っています。

 

辻本さんは現在、リードを削ることをされていないのですか?
辻本
そうですね。中学3年間、高校までは削っていて、大学に入ってから削らなくなったと思います。削っていたころは傳田文夫さんの「クラリネット・サキソフォンのためのシングルリード調整法」を見たり、いろんな人に聞いて試していました。それこそThe Clarinetを読んだりもしましたね。いろいろ試してみて、ここを削ったらこうなると実感していたんです。
自分の感覚では箱から開けて当たりが来た! というのが最強でSS級になります。削っていたのはB級とかC級で、C級の物がB級になったり、B級の物を削ってA級になることはあっても、それ以上にはならない感じだったんです。それはそれでいいと思って削っていましたが、でも確かにSS級のリードを見つけていくほうがいいな、と思い始めたんです。とはいえ、SS級がしょっちゅう出てくるわけでもないので、この「♭ふらっ砥」に期待しています(笑)

 

本番に使うのがSS級だと思いますが、他は?
辻本
SS、S、A、B、C以下という感じでランク付けしています。C以下は明らかに合わないというリードです。B以上のリードは2〜3日様子を見て、そこで変動があり、落ち着いたなというところでもう一度吹いてランク付けをします。A以上は残しておいて、B級は一応ストックしておきます。練習では基本的にA以上を使っています。

 

ランク付けした物には目印など付けているのですか?
辻本
昔はやっていました。リードケース内で分別したり、リードに直接書いたりもしていました。でも、近年は目印を付けるとその先入観を持って吹いてしまう気がするのでやめています。本番やレコーディング時は、自宅で目星を付けて選別していきますが、だいたい3〜5枚に絞っておいて、実際に現場で吹いてみて、そこで合うものを選びます。
完全な生音のシーンではSS級を登板させたいんですけど、会場が大きくPAありきだなというときは必ずしもSS級を使うとも限りません。少しガサついていても重めのほうがいいと思ったらSやAなどを選ぶ場合もあります。
それと、美しいメロディの楽曲のレコーディングでは音色的にシビアなので、そういうときにこそSS級を使ったりします。SS級は万能で、もし一生使えるならこれだけでいいというリードです。SS級はわかりやすくしていますが、他は特にまとめてないです。ちゃんとしているのか、大雑把なのかよくわからない感じになっています(笑)。
梅本
逆にちゃんとしているんだと思います。その日、そのときの状況で一番いい物を選ぶんですから。
辻本
SS級はもちろん、S級もめったにめぐり合わないのであまり気にしてないのかもしれませんね。

 

1箱の中で使えないリードの割合は?
辻本
だいたい半分くらいな気がしています。10枚入りだったら5枚くらい。吹いてみてすぐダメだとわかる物が3枚くらいで、数日経ってこの以上様子を見ても変わらないというのが2枚くらい。管楽器のことを知らない友人などに話すと不良品じゃん、と言われたりしますが、そういうことじゃないんですよね。The Clarinet誌で誰だったか忘れましたが、「天然の桃を8個買って、とても甘い物がたまにある。それと同じ」と書いていました。確かにそうですよね。
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